遺言には、遺言者の意思を書くのは自由ですが、遺言書に書いてあることのすべてが、相続人に対する強制力を持つことになるわけではありません。
遺言として強制力がある事項、つまり法律的な効力が生じる事項は、民法、その他の法律で限定されており、これを「法定遺言事項」と言います。現在、法定遺言事項として規定があるのは、おおよそ以下の事項どおりです。
1 相続に関する事項
@推定相続人の廃除とその取消し
A相続分の指定又は指定の委託
B特別受益者の相続分に関する指定
C遺産分割方法の指定又はその委託
D遺産分割の禁止
E共同相続人間の担保責任の定め
F遺贈の減殺方法の指定
2 財産処分に関する事項
@包括遺贈及び特定遺贈
A寄附行為
B信託の設定
3 身分に関する事項
@認知
A未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
4 遺言執行に関する事項
遺言執行者の指定又はその委託
5 その他
祭祀承継者の指定
■生前行為でも出来る事項
「法定遺言事項」は、裏を返せば遺言書の中で明確に取り決めておく必要のある事項とも言えますが、一部生前に自ら行っておくことができる事項もあります。
具体的には「法定遺言事項」のうち、
・推定相続人の廃除とその取消し
・認知
・寄附行為
・信託の設定
・特別受益者の相続分に関する指定
・祭祀承継者の指定
については、生前に行っておくことが可能です。
■遺言の対象となる「財産」
相続・遺贈の対象となるのは、被相続人ないし遺言者の財産です。
ここに言う「財産」は、その被相続人ないし遺言者個人の財産です。
会社は、いかなる会社であっても「法人」として個人とは別個の権利主体である以上、個人会社の代表取締役であったとしても会社の財産の処分について、遺言で定めることはできません。
もし記載をしても、その部分については遺言として無効となります。
■遺言書の中の法定遺言事項以外の記載
遺言書に記載された、「生命保険金受取人の変更」を有効なものとして認めた判例があります。
この判例は、そもそも保険金受取人の変更という行為が保険契約者の一方的意思表示によって効力が生じるとされていると言うことから、遺言の効力は遺言者の死亡によって生ずるものの、意思表示自体は生前に行われているのであり、死亡までに受取人変更権が行使されていると解されると判断したものです。
一方、遺言書の中に、例えば「葬儀は簡素に行うこと」「遺体の臓器は医療機関に提供すること」と言うことが記載されていることもありますが、このような記載については、遺言者の意向として明らかでも上記のような事情もないので、原則どおり法的な強制力はないことになります。
法定遺言事項以外の事項の実現を望むのであれば、生前から家族などと良く話し合って理解を得ておくことが大切と言うことになります。
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2009年08月21日
2009年07月05日
日本にいる外国人が遺言書を作成するときは?
■適用される法律(遺言の準拠法)の問題
日本に居る外国人が遺言をする場合、どの国(又は地方)の法律が適用されるのかという問題(準拠法の問題)を考慮する必要があります。
遺言をめぐっては、
@遺言書の作成方法(方式)についての準拠法
A遺言しようとする法律行為(遺贈や認知などの遺言内容)についての準拠法
B遺言の成立及び効力についての準拠法
を、それぞれ考える必要があります。
1 遺言書の作成方式についての準拠法
「遺言の方式の準拠法に関する法律」2条に定めるところにより、
@行為地法(遺言をする国・地方の法律)
A遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法律
B遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法律
C遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法律
D不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法
いずれかの法律に適合した方法で作成すれば有効とされます(遺言準拠2)。
したがって、在日外国人であれば「国籍を有している国の法律(本国法)による方式」でも、「行為地法ないし常居所法として日本の法律(民968以下)による方式」でも、有効な遺言を作成することが出来ます。
2 遺言しようとする法律行為についての準拠法
遺言の内容についての問題は、「法の適用に関する通則法」が定めるところによります。相続については、被相続人の本国法に従うものとされている一方(法通則36)、例えば、認知による親子関係の成立については、認知の当時の子の本国法が定める要件を満たすことも必要とされています(法通則29)。「本国法」とは、その者が国籍を有する国であり、2つ以上の国籍を有する場合は常居所を有している国ということになります(法通則38@)。
したがって、日本に住んでいて日本の方式で遺言書を作成したとしても、相続については、原則として国籍を有する本国法に従う必要があるということになります。
ただし、英米法国では相続財産を不動産と動産に分け、前者は不動産所在地法、後者は被相続人の住所地法を準拠法としています(相続分割主義)。例えば、遺産となる不動産を当該法制の国に所有している場合には、その不動産をめぐる手続の準拠法は事実上その国の規定による必要が生じるので注意が必要です。
3 遺言能力や遺言の意思表示の瑕疵などの成立及び効力についての準拠法
遺言当時の遺言者の本国法によって定められることになります(法通則37)。遺言の成立とは、遺言能力・遺言者の意思表示の瑕疵など、効力とは、遺言の効力の発生時期・条件・取消しの可否などを指します。
なお、遺言者の年齢、国籍その他の人的資格、及び証人の資格による遺言の方式の制限は、「遺言の方式の準拠法に関する法律」に言う「方式」に含まれるものとされているため(遺言準拠5)、上記1に挙げた準拠法により有効性が判断されることとなります。
4 反致
日本の「法の適用に関する通則法」で「本国法による」として、日本法以外の法を適用するとしているところ、その本国法が遺言の準拠法を行為地(遺言地)法と定めている場合には反致の問題となります。日本法は反致を認めているため(法通則41)、このときは日本法が準拠法となることになります。
■日本法に方式による自筆証書遺言の作成
遺言は、本国法・日本民法、不動産に関する遺言であれば、その不動産の所在地法等、いずれの方式によることも出来ます。
日本民法には、遺言に用いる言語に制限はないので、日本法の方式で外国語で遺言を作成することも可能です。また、押印については実印による必要はなく、拇印又は指印でも良いと解されています。
過去の判例には、遺言者が日常的にタイプライター等を使用して自筆の文書を作成する習慣がない場合に、遺言者本人がタイプして作成したこと、及び遺言が遺言者の真意に出たものであることが何らかの方法で証明されれば、タイプライター等を使用して作成されたものであっても日本法による自筆証書遺言として有効としたものもありますが、これは極例外的なケースであり、「自筆」つまり手書きであることは外国語で作成する場合でも必要な要件とされています。
■日本法の方式による公正証書遺言・秘密証書遺言の作成
1 言語と押印について
民法上、自筆証書遺言や秘密証書遺言では使用言語についての規定はないため、外国語で遺言することも可能です。
また、印鑑がない場合には署名に加えて拇印又は指印で代えることも出来るとされています。
2 身元の確認方法
本人の確認には、印鑑登録証明書による他、遺言書の本国政府発行の旅券、又は市町村長発行の外国人登録証の提示など、他の確実な方法によることが出来ます(公証28A)。
3 外国語での「口授」
公正証書遺言は日本語で作成されるため(公証27)、遺言者が日本語を解さない場合には、通事の通訳のもとに作成します。
「口授」の要件を満たすためには、通事が遺言者の口頭で意思表明を通訳して公証人に伝え、また公証人の読み聞かせ等を通訳して遺言者に伝えることが必要であり、遺言という行為の重大性や遺言者の意思尊重の必要性からすれば、その外国人が日常的な日本語を解する能力があっても、なお適切な通事の通訳(公証29)を介して母国語によって遺言をさせるべき、と解されています。
4 証人の立会い
証人の資格による遺言の方式の制限は、「遺言の方式の準拠法に関する法律」にいう「方式」に含まれるものとされているため(遺言準拠5)、
■適用される法律(遺言の準拠法)の問題の1に挙げた準拠法により、有効性が判断されることとなります。日本民法では、974条に定める証人適格者であれば外国人もなることが出来ますが、証人には遺言者が口授した内容が正確に筆記されたことを証明する役割を担うので、遺言者の述べた内容を理解出来ていなければ、証人立会いの要件が満たされたことにはなりません。
■遺言執行者の指定等について
遺言執行者の指定、選任及び権限については、相続の準拠法である本国法(民1006@)が適用されます(法通則36)。
英米法国では不動産の相続は、その所在地の法律に従って相続されるのが原則とされており、さらに英米法国では遺言の執行に関して遺言執行者を専ら司法機関の選任によるものとして、裁判所の監督の下で遺産管理・清算を行わせる方正が採られています。したがって、遺言者が日本以外の国に財産を有している場合には、遺言で指定された遺言執行者でも、裁判所の選任手続を経る必要が生じるなど、その財産の執行は、その国の制度に従って行われることになります。
日本に居る外国人が遺言をする場合、どの国(又は地方)の法律が適用されるのかという問題(準拠法の問題)を考慮する必要があります。
遺言をめぐっては、
@遺言書の作成方法(方式)についての準拠法
A遺言しようとする法律行為(遺贈や認知などの遺言内容)についての準拠法
B遺言の成立及び効力についての準拠法
を、それぞれ考える必要があります。
1 遺言書の作成方式についての準拠法
「遺言の方式の準拠法に関する法律」2条に定めるところにより、
@行為地法(遺言をする国・地方の法律)
A遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法律
B遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法律
C遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法律
D不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法
いずれかの法律に適合した方法で作成すれば有効とされます(遺言準拠2)。
したがって、在日外国人であれば「国籍を有している国の法律(本国法)による方式」でも、「行為地法ないし常居所法として日本の法律(民968以下)による方式」でも、有効な遺言を作成することが出来ます。
2 遺言しようとする法律行為についての準拠法
遺言の内容についての問題は、「法の適用に関する通則法」が定めるところによります。相続については、被相続人の本国法に従うものとされている一方(法通則36)、例えば、認知による親子関係の成立については、認知の当時の子の本国法が定める要件を満たすことも必要とされています(法通則29)。「本国法」とは、その者が国籍を有する国であり、2つ以上の国籍を有する場合は常居所を有している国ということになります(法通則38@)。
したがって、日本に住んでいて日本の方式で遺言書を作成したとしても、相続については、原則として国籍を有する本国法に従う必要があるということになります。
ただし、英米法国では相続財産を不動産と動産に分け、前者は不動産所在地法、後者は被相続人の住所地法を準拠法としています(相続分割主義)。例えば、遺産となる不動産を当該法制の国に所有している場合には、その不動産をめぐる手続の準拠法は事実上その国の規定による必要が生じるので注意が必要です。
3 遺言能力や遺言の意思表示の瑕疵などの成立及び効力についての準拠法
遺言当時の遺言者の本国法によって定められることになります(法通則37)。遺言の成立とは、遺言能力・遺言者の意思表示の瑕疵など、効力とは、遺言の効力の発生時期・条件・取消しの可否などを指します。
なお、遺言者の年齢、国籍その他の人的資格、及び証人の資格による遺言の方式の制限は、「遺言の方式の準拠法に関する法律」に言う「方式」に含まれるものとされているため(遺言準拠5)、上記1に挙げた準拠法により有効性が判断されることとなります。
4 反致
日本の「法の適用に関する通則法」で「本国法による」として、日本法以外の法を適用するとしているところ、その本国法が遺言の準拠法を行為地(遺言地)法と定めている場合には反致の問題となります。日本法は反致を認めているため(法通則41)、このときは日本法が準拠法となることになります。
■日本法に方式による自筆証書遺言の作成
遺言は、本国法・日本民法、不動産に関する遺言であれば、その不動産の所在地法等、いずれの方式によることも出来ます。
日本民法には、遺言に用いる言語に制限はないので、日本法の方式で外国語で遺言を作成することも可能です。また、押印については実印による必要はなく、拇印又は指印でも良いと解されています。
過去の判例には、遺言者が日常的にタイプライター等を使用して自筆の文書を作成する習慣がない場合に、遺言者本人がタイプして作成したこと、及び遺言が遺言者の真意に出たものであることが何らかの方法で証明されれば、タイプライター等を使用して作成されたものであっても日本法による自筆証書遺言として有効としたものもありますが、これは極例外的なケースであり、「自筆」つまり手書きであることは外国語で作成する場合でも必要な要件とされています。
■日本法の方式による公正証書遺言・秘密証書遺言の作成
1 言語と押印について
民法上、自筆証書遺言や秘密証書遺言では使用言語についての規定はないため、外国語で遺言することも可能です。
また、印鑑がない場合には署名に加えて拇印又は指印で代えることも出来るとされています。
2 身元の確認方法
本人の確認には、印鑑登録証明書による他、遺言書の本国政府発行の旅券、又は市町村長発行の外国人登録証の提示など、他の確実な方法によることが出来ます(公証28A)。
3 外国語での「口授」
公正証書遺言は日本語で作成されるため(公証27)、遺言者が日本語を解さない場合には、通事の通訳のもとに作成します。
「口授」の要件を満たすためには、通事が遺言者の口頭で意思表明を通訳して公証人に伝え、また公証人の読み聞かせ等を通訳して遺言者に伝えることが必要であり、遺言という行為の重大性や遺言者の意思尊重の必要性からすれば、その外国人が日常的な日本語を解する能力があっても、なお適切な通事の通訳(公証29)を介して母国語によって遺言をさせるべき、と解されています。
4 証人の立会い
証人の資格による遺言の方式の制限は、「遺言の方式の準拠法に関する法律」にいう「方式」に含まれるものとされているため(遺言準拠5)、
■適用される法律(遺言の準拠法)の問題の1に挙げた準拠法により、有効性が判断されることとなります。日本民法では、974条に定める証人適格者であれば外国人もなることが出来ますが、証人には遺言者が口授した内容が正確に筆記されたことを証明する役割を担うので、遺言者の述べた内容を理解出来ていなければ、証人立会いの要件が満たされたことにはなりません。
■遺言執行者の指定等について
遺言執行者の指定、選任及び権限については、相続の準拠法である本国法(民1006@)が適用されます(法通則36)。
英米法国では不動産の相続は、その所在地の法律に従って相続されるのが原則とされており、さらに英米法国では遺言の執行に関して遺言執行者を専ら司法機関の選任によるものとして、裁判所の監督の下で遺産管理・清算を行わせる方正が採られています。したがって、遺言者が日本以外の国に財産を有している場合には、遺言で指定された遺言執行者でも、裁判所の選任手続を経る必要が生じるなど、その財産の執行は、その国の制度に従って行われることになります。
2009年04月17日
外国にいる日本人が遺言書を作成するときは?
■適用される法律(遺言の準拠法)の問題
外国に居る日本人が遺言をする場合、どの国(又は地方)の法律が適用されるのかという問題(準拠法の問題)を考慮する必要があります。
遺言をめぐっては、
@遺言書の作成方法(方式)についての準拠法
A遺言しようとする法律行為(遺贈や認知などの遺言内容)についての準拠法
B遺言の成立及び効力についての準拠法
を、それぞれ考える必要があります。
1 遺言書の作成方式についての準拠法
「遺言の方式の準拠法に関する法律」2条に定めるところにより、
@行為地法(遺言をする国・地方の法律)
A遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法律
B遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法律
C遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法律
D不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法
いずれかの法律に適合した方法で作成すれば有効とされます。
したがって、日本人であれば「日本の法律(民968以下)で決められた方式」でも、「遺言書を作成するときに在住している国の法律で決められた方式」でも、有効な遺言を作成することが出来ます。
2 遺言しようとする法律行為についての準拠法
遺言の内容についての問題は、「法の適用に関する通則法」が定めるところによります。
相続については、被相続人の本国法に従うものとされている一方(法通則36)、例えば、認知による親子関係の成立については、認知の当時の子の本国法が定める要件を満たすことも必要とされています(法通則29)。
「本国法」とは、その者が国籍を有する国であり、2つ以上の国籍を有する場合は常居所を有している国ということになります。
なお、日本法を含む多くの国では、相続については上記のように被相続人の本国法を準拠法としています(相続統一主義)が、英米法国では相続財産を不動産と動産に分け、前者は不動産所在地法、後者は被相続人の住所地法を準拠法としています。
例えば、遺産となる不動産がアメリカ・カリフォルニア州にある場合には、被相続人が日本人であっても、その不動産をめぐる手続の準拠法は事実上カリフォルニア州となり、検認の要件・効果や遺言執行等はカリフォルニア州法の規定による必要が生じます。
したがって、外国に遺産となる不動産を所有しているような場合には、遺言作成時に現地の国際私法や遺言法等も検討すべきでしょう。
3 遺言能力や遺言の意思表示の瑕疵などの成立及び効力についての準拠法
日本人の遺言が外国法で定める方式でなされても、遺言の成立及び効力が問題となって日本国内で争われる場合には、遺言当時の遺言者の本国法である日本法で判断されることになります(法通則37)。
遺言の成立とは、遺言能力・遺言者の意思表示の瑕疵など、効力とは、遺言の効力の発生時期・条件・取消しの可否などを指します。
なお、遺言者の年齢、国籍その他の人的資格、及び証人の資格による遺言の方式の制限は、「遺言の方式の準拠法に関する法律」に言う「方式」に含まれるものとされているため(遺言準拠5)、上記1に挙げた準拠法により有効性が判断されることとなります。
■外国において日本民法に基づく遺言を作成するには
上記のように、外国であっても日本民法の規定に従って、基本的には日本で作成する場合と同様の要件で自筆証書遺言を作成することが出来ますし、日本の領事の駐在する地であれば公正証書遺言・秘密証書遺言を作成することが出来ます。
1 言語と押印について
民法上、自筆証書遺言や秘密証書遺言では使用言語についての規定はないため、外国語で遺言することも可能です。
また、印鑑がない場合には署名に加えて拇印又は指印で代えることも出来るとされています(最判平元・2・16判時1306・3)。
2 公正証書遺言・秘密証書遺言の作成
公証人が公正証書を作成できる国では、その国の法律に従って作成することも行為地法として有効です(遺言準拠2一)が、それが出来ない国にあっても「日本の領事の駐在する地」であれば、その領事に公証人の職務を行わせ、日本の民法に定められた要件のもとで遺言を作成することが出来ます(領事方式、民984)。
この方法は、領事の駐在する地に住んでいることは要件ではなく、旅行者など一時的滞在者も利用することが出来ます。
本人の確認には、印鑑登録証明書による他、旅券又は運転免許証の提示など、他の確実な方法によることが出来ます(公証28A)。
遺言をする際の用語は日本語でも外国語でも良いですが、遺言者が日本語を解せない場合には通事を立会わせることが必要です(公証29)。
また、証人には遺言者が口授した内容が正確に筆記されたことを証明する役割を担うので、遺言者の述べた内容を理解出来ていなければ、証人立会いの要件が満たされたことにはなりません。
■遺言執行者の指定等について
遺言執行者の指定、選任及び権限については、相続の準拠法である本国法(法通則36)が適用され、日本人であれば遺言執行者を指定することができます(民1006@)。
ただし、上記のように英米法国では不動産の相続は、その所在地の法律に従って相続されるのが原則とされており、さらに英米法国では遺言の執行に関して遺言執行者を専ら司法機関の選任によるものとして、裁判所の監督の下で遺産管理・清算を行わせる方正が採られています。
したがって、遺言者が日本以外の国に財産を有している場合には、遺言で指定された遺言執行者でも、裁判所の選任手続を経る必要が生じるなど、その財産の執行は、その国の制度に従って行われることになります。
外国に居る日本人が遺言をする場合、どの国(又は地方)の法律が適用されるのかという問題(準拠法の問題)を考慮する必要があります。
遺言をめぐっては、
@遺言書の作成方法(方式)についての準拠法
A遺言しようとする法律行為(遺贈や認知などの遺言内容)についての準拠法
B遺言の成立及び効力についての準拠法
を、それぞれ考える必要があります。
1 遺言書の作成方式についての準拠法
「遺言の方式の準拠法に関する法律」2条に定めるところにより、
@行為地法(遺言をする国・地方の法律)
A遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法律
B遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法律
C遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法律
D不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法
いずれかの法律に適合した方法で作成すれば有効とされます。
したがって、日本人であれば「日本の法律(民968以下)で決められた方式」でも、「遺言書を作成するときに在住している国の法律で決められた方式」でも、有効な遺言を作成することが出来ます。
2 遺言しようとする法律行為についての準拠法
遺言の内容についての問題は、「法の適用に関する通則法」が定めるところによります。
相続については、被相続人の本国法に従うものとされている一方(法通則36)、例えば、認知による親子関係の成立については、認知の当時の子の本国法が定める要件を満たすことも必要とされています(法通則29)。
「本国法」とは、その者が国籍を有する国であり、2つ以上の国籍を有する場合は常居所を有している国ということになります。
なお、日本法を含む多くの国では、相続については上記のように被相続人の本国法を準拠法としています(相続統一主義)が、英米法国では相続財産を不動産と動産に分け、前者は不動産所在地法、後者は被相続人の住所地法を準拠法としています。
例えば、遺産となる不動産がアメリカ・カリフォルニア州にある場合には、被相続人が日本人であっても、その不動産をめぐる手続の準拠法は事実上カリフォルニア州となり、検認の要件・効果や遺言執行等はカリフォルニア州法の規定による必要が生じます。
したがって、外国に遺産となる不動産を所有しているような場合には、遺言作成時に現地の国際私法や遺言法等も検討すべきでしょう。
3 遺言能力や遺言の意思表示の瑕疵などの成立及び効力についての準拠法
日本人の遺言が外国法で定める方式でなされても、遺言の成立及び効力が問題となって日本国内で争われる場合には、遺言当時の遺言者の本国法である日本法で判断されることになります(法通則37)。
遺言の成立とは、遺言能力・遺言者の意思表示の瑕疵など、効力とは、遺言の効力の発生時期・条件・取消しの可否などを指します。
なお、遺言者の年齢、国籍その他の人的資格、及び証人の資格による遺言の方式の制限は、「遺言の方式の準拠法に関する法律」に言う「方式」に含まれるものとされているため(遺言準拠5)、上記1に挙げた準拠法により有効性が判断されることとなります。
■外国において日本民法に基づく遺言を作成するには
上記のように、外国であっても日本民法の規定に従って、基本的には日本で作成する場合と同様の要件で自筆証書遺言を作成することが出来ますし、日本の領事の駐在する地であれば公正証書遺言・秘密証書遺言を作成することが出来ます。
1 言語と押印について
民法上、自筆証書遺言や秘密証書遺言では使用言語についての規定はないため、外国語で遺言することも可能です。
また、印鑑がない場合には署名に加えて拇印又は指印で代えることも出来るとされています(最判平元・2・16判時1306・3)。
2 公正証書遺言・秘密証書遺言の作成
公証人が公正証書を作成できる国では、その国の法律に従って作成することも行為地法として有効です(遺言準拠2一)が、それが出来ない国にあっても「日本の領事の駐在する地」であれば、その領事に公証人の職務を行わせ、日本の民法に定められた要件のもとで遺言を作成することが出来ます(領事方式、民984)。
この方法は、領事の駐在する地に住んでいることは要件ではなく、旅行者など一時的滞在者も利用することが出来ます。
本人の確認には、印鑑登録証明書による他、旅券又は運転免許証の提示など、他の確実な方法によることが出来ます(公証28A)。
遺言をする際の用語は日本語でも外国語でも良いですが、遺言者が日本語を解せない場合には通事を立会わせることが必要です(公証29)。
また、証人には遺言者が口授した内容が正確に筆記されたことを証明する役割を担うので、遺言者の述べた内容を理解出来ていなければ、証人立会いの要件が満たされたことにはなりません。
■遺言執行者の指定等について
遺言執行者の指定、選任及び権限については、相続の準拠法である本国法(法通則36)が適用され、日本人であれば遺言執行者を指定することができます(民1006@)。
ただし、上記のように英米法国では不動産の相続は、その所在地の法律に従って相続されるのが原則とされており、さらに英米法国では遺言の執行に関して遺言執行者を専ら司法機関の選任によるものとして、裁判所の監督の下で遺産管理・清算を行わせる方正が採られています。
したがって、遺言者が日本以外の国に財産を有している場合には、遺言で指定された遺言執行者でも、裁判所の選任手続を経る必要が生じるなど、その財産の執行は、その国の制度に従って行われることになります。
2008年12月20日
認知症の者が遺言を作成するときは?
■遺言能力
民法は、遺言者が満15歳以上で、遺言をする時において能力を有していれば遺言をすることが出来るとしています。
遺言をする能力を遺言能力と言い、民法963条の「能力」とは一般的に意思能力を指す者と考えられます。泥酔者などには意思能力がなく、認知症の者も症状の程度が進行しており、事理を弁識する能力を欠く状態になっているような場合には意思能力なしとして遺言は無効になります。
また、一般の法律行為については、判断能力を有しないものを保護する見地から、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の規定を設け、それぞれ行為に制限を受ける旨の規定を定めています。
しかし、遺言に関しては15歳以上であれば遺言能力を有するとし、制限行為能力者についてその規定を適用しないとしており、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人も遺言能力を有するとしています。
このような、一般的な法律行為と異なる定めをおいた趣旨は、「遺言は自然人の最終的な意思であり、出来る限り尊重すべきであるという価値判断が働くこと」「遺言の内容は認知等の身分行為も含まれること」「一般の法律行為ほどの保護を制限行為能力者に与えなくても、遺言の効果が発生するのは遺言者死亡時からであるため遺言者の保護に欠けることはないこと」が挙げられます。
もっとも、成年被後見人については、後述しますように事理を弁識する能力を一時回復した時点において、医師2人以上の立会いのもと、遺言をしなければならないと定めています。
よって、15歳以上であり、かつ、意思能力を有する場合には遺言をすることは出来ますが、成年被後見人については、民法の定める手続によらなければならないことになります。
このことは、すべての方式の遺言に当てはまります。
■成年被後見人の遺言
1 手続
成年被後見人が遺言を作成する場合、各遺言個別の要件を満たす他に、以下の要件を満たす必要があります。
@成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復したときに遺言を作成すること
A医師2人以上が立会うこと
B遺言に立会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神情の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を、遺言書に付記して署名押印すること
C秘密証書遺言においては、封紙にその旨を記載し署名押印すること
民法973条は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言いずれにも適用されますが、成年被後見人がいつの時点において、事理を弁識する能力を一時回復している必要があるかについては、遺言の種類ごとに異なります。
自筆証書遺言では、遺言者が遺言書の全文、日付及び氏名を自書し押印する際に能力を回復している必要があります。
公正証書遺言では、公証人に遺言の趣旨を口授するところから公証人が署名押印するまでの全体で能力を回復している必要があります。
秘密証書遺言では、遺言書本文の作成と遺言証書を封じた封書を公証人及び証人2人以上の前に提出し、公証人が署名押印するまでの間に時間が空く可能性がありますが、封書を公証人に提出した時に能力を回復している必要があります。
医師は、遺言者がそれぞれ能力を有していなければならない間、間断なく、立会っている必要があります。
なお、医師は立会人になりますので、証人及び立会人の欠格事由に該当する医師は立会うことが出来ません。
よって、認知症の老人が遺言を作成する場合、遺言者が成年被後見人となっている場合は、民法973条の手続を経る必要が生じます。
成年被後見人となっていない場合、民法973条の手続を経る必要はありませんが、後日遺言の無効が争われるリスクを軽減するには、民法973条の手続に従って作成するほうが良いと思われます。
2 意思能力の有無の判断
いかなる場合に意思能力を有し、事理を弁識する能力を一時回復していたかの判断は、事案ごとの判断になります。
公正証書遺言によったとしても、遺言能力を有さないという事案はあります。遺言能力の有無の判断要素は、遺言者の年齢、病状の推移、遺言作成時前後の様子、発病と遺言時との時期的関係、遺言時及びその前後の言動、日頃の遺言についての意向、遺言内容等になります)
例えば、名古屋地裁岡崎支部平成5年5月27日判決(判時1474・128)は、脳梗塞になり禁治産宣告を受けた遺言者が、脳梗塞後、判断能力が日によって好転と悪化を繰り返していたとした上で、遺言作成時には、判断能力が良好な状態であることを医師が確認したものとして、遺言作成時には判断能力を有していたと認定しています。
■被保佐人・知的障害者の遺言
被保佐人は、事理弁識能力が著しく不十分な者を言います。被保佐人が重要な財産処分行為をするには、保佐人の同意が必要であるとされていますが、被保佐人が遺言をするには制限がありません。
また、知的障害者も、遺言能力を有してさえいれば特段の制限はありません。被保佐人や知的障害者が、遺言書を作成するための民法973条の手続を経る必要性はありません。
しかし、「被保佐人であっても判断能力の低下が進行することはあり得ること」「知的障害者も必ずしも作成時に意思能力を有しているとは言い切れないこと」からすると、遺言書の作成は慎重にされるべきです。
判断能力に疑問があり、後日遺言の無効が争われるリスクを軽減するには、民法973条の手続に従って作成することが良いと考えます。
また、「医師の診察を受け診断書等を作成してもらう」「遺言者の生活状況、病気の状況等を細かに記録する」などして、遺言者の状態を記録化しておくことも、後日遺言能力が争われた際の証拠になり得るため良いと考えます。
民法は、遺言者が満15歳以上で、遺言をする時において能力を有していれば遺言をすることが出来るとしています。
遺言をする能力を遺言能力と言い、民法963条の「能力」とは一般的に意思能力を指す者と考えられます。泥酔者などには意思能力がなく、認知症の者も症状の程度が進行しており、事理を弁識する能力を欠く状態になっているような場合には意思能力なしとして遺言は無効になります。
また、一般の法律行為については、判断能力を有しないものを保護する見地から、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の規定を設け、それぞれ行為に制限を受ける旨の規定を定めています。
しかし、遺言に関しては15歳以上であれば遺言能力を有するとし、制限行為能力者についてその規定を適用しないとしており、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人も遺言能力を有するとしています。
このような、一般的な法律行為と異なる定めをおいた趣旨は、「遺言は自然人の最終的な意思であり、出来る限り尊重すべきであるという価値判断が働くこと」「遺言の内容は認知等の身分行為も含まれること」「一般の法律行為ほどの保護を制限行為能力者に与えなくても、遺言の効果が発生するのは遺言者死亡時からであるため遺言者の保護に欠けることはないこと」が挙げられます。
もっとも、成年被後見人については、後述しますように事理を弁識する能力を一時回復した時点において、医師2人以上の立会いのもと、遺言をしなければならないと定めています。
よって、15歳以上であり、かつ、意思能力を有する場合には遺言をすることは出来ますが、成年被後見人については、民法の定める手続によらなければならないことになります。
このことは、すべての方式の遺言に当てはまります。
■成年被後見人の遺言
1 手続
成年被後見人が遺言を作成する場合、各遺言個別の要件を満たす他に、以下の要件を満たす必要があります。
@成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復したときに遺言を作成すること
A医師2人以上が立会うこと
B遺言に立会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神情の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を、遺言書に付記して署名押印すること
C秘密証書遺言においては、封紙にその旨を記載し署名押印すること
民法973条は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言いずれにも適用されますが、成年被後見人がいつの時点において、事理を弁識する能力を一時回復している必要があるかについては、遺言の種類ごとに異なります。
自筆証書遺言では、遺言者が遺言書の全文、日付及び氏名を自書し押印する際に能力を回復している必要があります。
公正証書遺言では、公証人に遺言の趣旨を口授するところから公証人が署名押印するまでの全体で能力を回復している必要があります。
秘密証書遺言では、遺言書本文の作成と遺言証書を封じた封書を公証人及び証人2人以上の前に提出し、公証人が署名押印するまでの間に時間が空く可能性がありますが、封書を公証人に提出した時に能力を回復している必要があります。
医師は、遺言者がそれぞれ能力を有していなければならない間、間断なく、立会っている必要があります。
なお、医師は立会人になりますので、証人及び立会人の欠格事由に該当する医師は立会うことが出来ません。
よって、認知症の老人が遺言を作成する場合、遺言者が成年被後見人となっている場合は、民法973条の手続を経る必要が生じます。
成年被後見人となっていない場合、民法973条の手続を経る必要はありませんが、後日遺言の無効が争われるリスクを軽減するには、民法973条の手続に従って作成するほうが良いと思われます。
2 意思能力の有無の判断
いかなる場合に意思能力を有し、事理を弁識する能力を一時回復していたかの判断は、事案ごとの判断になります。
公正証書遺言によったとしても、遺言能力を有さないという事案はあります。遺言能力の有無の判断要素は、遺言者の年齢、病状の推移、遺言作成時前後の様子、発病と遺言時との時期的関係、遺言時及びその前後の言動、日頃の遺言についての意向、遺言内容等になります)
例えば、名古屋地裁岡崎支部平成5年5月27日判決(判時1474・128)は、脳梗塞になり禁治産宣告を受けた遺言者が、脳梗塞後、判断能力が日によって好転と悪化を繰り返していたとした上で、遺言作成時には、判断能力が良好な状態であることを医師が確認したものとして、遺言作成時には判断能力を有していたと認定しています。
■被保佐人・知的障害者の遺言
被保佐人は、事理弁識能力が著しく不十分な者を言います。被保佐人が重要な財産処分行為をするには、保佐人の同意が必要であるとされていますが、被保佐人が遺言をするには制限がありません。
また、知的障害者も、遺言能力を有してさえいれば特段の制限はありません。被保佐人や知的障害者が、遺言書を作成するための民法973条の手続を経る必要性はありません。
しかし、「被保佐人であっても判断能力の低下が進行することはあり得ること」「知的障害者も必ずしも作成時に意思能力を有しているとは言い切れないこと」からすると、遺言書の作成は慎重にされるべきです。
判断能力に疑問があり、後日遺言の無効が争われるリスクを軽減するには、民法973条の手続に従って作成することが良いと考えます。
また、「医師の診察を受け診断書等を作成してもらう」「遺言者の生活状況、病気の状況等を細かに記録する」などして、遺言者の状態を記録化しておくことも、後日遺言能力が争われた際の証拠になり得るため良いと考えます。
2008年11月27日
身体に障害がある者が遺言を作成するときは?
■口が利けない者の遺言の作成
1 自筆証書遺言の作成
口が利けない者が、自筆証書遺言を作成することは問題ありません。
2 公正証書遺言の作成
公正証書遺言は、公証人が関与することで、公証人から記載の仕方等について指摘を受けることが出来るため無効となるおそれが低い点、公証役場に原本が保管されるために紛失のおそれがない点、検認手続が不要となる点といったメリットの多い遺言です。
しかしながら、平成11年法律149号改正前の民法では、公正証書遺言を作成するには遺言者による遺言の趣旨の「口授」「口述」が必要とされていたため、口が利けない者は公正証書遺言をすることが出来ず、上記メリットを享受出来ないとされてきました。
そこで、平成11年法律149号改正民法では、「口授」に代えて遺言の趣旨を通訳人の通訳又は自書をすることで、公正証書遺言を作成することが出来るようになりました。
この場合、公証人は通訳人の通訳又は自書によったことを公正証書遺言に記載しなければなりません。
「口が利けない者」とは、身体的な言語機能障害者のみならず、聴覚障害や老齢等のために発話が困難で、公証人や証人等の発話内容の聴取が困難な場合や、一時的な言語機能障害も含むと考えられます。
また、「通訳人の通訳」とは手話通訳のみならず、読話、解読、指点字による方法など様々な方法が可能なものと考えられます。
3 秘密証書遺言の作成
秘密証書遺言は、平成11年法律149号改正前の民法でも、自己の遺言書である旨及び遺言者の氏名・住所を自書して「申述」に代えることが出来るとされていましたが、平成11年法律149号改正民法により、自書に加えて通訳人の通訳により申述に代えることが出来るようになり、両者を選択出来るようになりました。
4 特別方式による遺言の作成
死亡危急者遺言でも、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述することで、口授に代えることが出来るようになりました。
また、船舶遭難者遺言でも、通訳人の通訳により遺言をすることが出来るようになりました。
■耳が聞こえない者の遺言の作成
1 自筆証書遺言の作成
耳が聞こえない者が、自筆証書遺言を作成することは問題ありません。
2 公正証書遺言の作成
公正証書遺言は、前掲■口が利けない者の遺言の作成 2でも述べたようにメリットの多い遺言です。
しかしながら、平成11年法律149号改正前の民法では、公正証書遺言を作成するには遺言者の「読み聞かせ」が必要とされていたため、耳が聞こえない者は公正証書遺言をすることが出来ず、上記メリットを享受出来ないとされてきました。
そこで、平成11年法律149号改正民法では、「読み聞かせ又は閲覧」させることとし、閲覧によっても公正証書遺言の作成が可能となった上、耳の聞こえない者は通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて「読み聞かせ」に代えることが出来るようになりました。
この場合、公証人は通訳人の通訳によったことを公正証書遺言に記載しなければなりません。
「耳が聞こえない者」とは、身体的な聴覚機能障害者のみならず、一時的な聴覚機能障害も含むと考えられます。また、「通訳人の通訳」とは手話通訳のみならず、様々な方法が可能なものと考えられます。
3 秘密証書遺言の作成
耳が聞こえない者が秘密証書遺言を作成することは、自己の遺言書である旨及び遺言者の氏名・住所を自書して「申述」することが出来れば可能なものと考えます。
しかし、出来ない場合には「口が利けない者」と同様の問題になるものと思われます。
4 特別方式による遺言の作成
死亡危急者遺言でも、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせるか、又は閲覧させることが出来るようになり、さらに、耳の聞こえない者については、筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者に伝えて「読み聞かせ」に代えることが出来るようになりました。
すなわち、耳の聞こえない者に関しては、筆記した内容を閲覧の方法によるか通訳人の通訳によることが出来るようになりました。
■目が見えない者の遺言の作成
1 自筆証書遺言の作成
自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付及び指名を自書しなければなりません。
その趣旨は、その筆跡によって遺言者本人が作成した遺言書であると確認する点にあります。
そのため、点字やパソコン等による遺言書は、遺言者本人が作成したものであっても、筆跡によって遺言者本人が作成したものか検証することが出来ないため無効であると考えます。
そのため目の見えない者は、全文、日付、氏名を自書できるような場合を除いて、自筆証書遺言の作成は出来得ないと言えます。
2 公正証書遺言の作成
公正証書遺言の作成には、遺言者が公証人の作成した遺言書の筆記の内容が正確なことを承認することが求められているため、目の見えない者は公正証書遺言が出来ないようにも思われますが、判例は目の見えない者も公正証書遺言の証人となることが出来るとしていること、公証人は遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせており、筆記が遺言者の口授と一致しているかは目に見えない者でも検証可能であることからすると、目の見えない者でも公正証書遺言は出来るものと言えます。
また、目の見えない者が遺言書に署名できない場合、公証人がその事由を遺言書に付記して署名に代えることが出来ます。
3 秘密証書遺言の作成
秘密証書遺言は、遺言書本文を自書することが要件となっておらず、求められているのは遺言書本文及び封紙への自書であることからすると、遺言者において自署することが可能であれば、遺言書本文は点字であっても問題ないと言えます。
1 自筆証書遺言の作成
口が利けない者が、自筆証書遺言を作成することは問題ありません。
2 公正証書遺言の作成
公正証書遺言は、公証人が関与することで、公証人から記載の仕方等について指摘を受けることが出来るため無効となるおそれが低い点、公証役場に原本が保管されるために紛失のおそれがない点、検認手続が不要となる点といったメリットの多い遺言です。
しかしながら、平成11年法律149号改正前の民法では、公正証書遺言を作成するには遺言者による遺言の趣旨の「口授」「口述」が必要とされていたため、口が利けない者は公正証書遺言をすることが出来ず、上記メリットを享受出来ないとされてきました。
そこで、平成11年法律149号改正民法では、「口授」に代えて遺言の趣旨を通訳人の通訳又は自書をすることで、公正証書遺言を作成することが出来るようになりました。
この場合、公証人は通訳人の通訳又は自書によったことを公正証書遺言に記載しなければなりません。
「口が利けない者」とは、身体的な言語機能障害者のみならず、聴覚障害や老齢等のために発話が困難で、公証人や証人等の発話内容の聴取が困難な場合や、一時的な言語機能障害も含むと考えられます。
また、「通訳人の通訳」とは手話通訳のみならず、読話、解読、指点字による方法など様々な方法が可能なものと考えられます。
3 秘密証書遺言の作成
秘密証書遺言は、平成11年法律149号改正前の民法でも、自己の遺言書である旨及び遺言者の氏名・住所を自書して「申述」に代えることが出来るとされていましたが、平成11年法律149号改正民法により、自書に加えて通訳人の通訳により申述に代えることが出来るようになり、両者を選択出来るようになりました。
4 特別方式による遺言の作成
死亡危急者遺言でも、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述することで、口授に代えることが出来るようになりました。
また、船舶遭難者遺言でも、通訳人の通訳により遺言をすることが出来るようになりました。
■耳が聞こえない者の遺言の作成
1 自筆証書遺言の作成
耳が聞こえない者が、自筆証書遺言を作成することは問題ありません。
2 公正証書遺言の作成
公正証書遺言は、前掲■口が利けない者の遺言の作成 2でも述べたようにメリットの多い遺言です。
しかしながら、平成11年法律149号改正前の民法では、公正証書遺言を作成するには遺言者の「読み聞かせ」が必要とされていたため、耳が聞こえない者は公正証書遺言をすることが出来ず、上記メリットを享受出来ないとされてきました。
そこで、平成11年法律149号改正民法では、「読み聞かせ又は閲覧」させることとし、閲覧によっても公正証書遺言の作成が可能となった上、耳の聞こえない者は通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて「読み聞かせ」に代えることが出来るようになりました。
この場合、公証人は通訳人の通訳によったことを公正証書遺言に記載しなければなりません。
「耳が聞こえない者」とは、身体的な聴覚機能障害者のみならず、一時的な聴覚機能障害も含むと考えられます。また、「通訳人の通訳」とは手話通訳のみならず、様々な方法が可能なものと考えられます。
3 秘密証書遺言の作成
耳が聞こえない者が秘密証書遺言を作成することは、自己の遺言書である旨及び遺言者の氏名・住所を自書して「申述」することが出来れば可能なものと考えます。
しかし、出来ない場合には「口が利けない者」と同様の問題になるものと思われます。
4 特別方式による遺言の作成
死亡危急者遺言でも、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせるか、又は閲覧させることが出来るようになり、さらに、耳の聞こえない者については、筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者に伝えて「読み聞かせ」に代えることが出来るようになりました。
すなわち、耳の聞こえない者に関しては、筆記した内容を閲覧の方法によるか通訳人の通訳によることが出来るようになりました。
■目が見えない者の遺言の作成
1 自筆証書遺言の作成
自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付及び指名を自書しなければなりません。
その趣旨は、その筆跡によって遺言者本人が作成した遺言書であると確認する点にあります。
そのため、点字やパソコン等による遺言書は、遺言者本人が作成したものであっても、筆跡によって遺言者本人が作成したものか検証することが出来ないため無効であると考えます。
そのため目の見えない者は、全文、日付、氏名を自書できるような場合を除いて、自筆証書遺言の作成は出来得ないと言えます。
2 公正証書遺言の作成
公正証書遺言の作成には、遺言者が公証人の作成した遺言書の筆記の内容が正確なことを承認することが求められているため、目の見えない者は公正証書遺言が出来ないようにも思われますが、判例は目の見えない者も公正証書遺言の証人となることが出来るとしていること、公証人は遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせており、筆記が遺言者の口授と一致しているかは目に見えない者でも検証可能であることからすると、目の見えない者でも公正証書遺言は出来るものと言えます。
また、目の見えない者が遺言書に署名できない場合、公証人がその事由を遺言書に付記して署名に代えることが出来ます。
3 秘密証書遺言の作成
秘密証書遺言は、遺言書本文を自書することが要件となっておらず、求められているのは遺言書本文及び封紙への自書であることからすると、遺言者において自署することが可能であれば、遺言書本文は点字であっても問題ないと言えます。
2008年11月11日
日付の記載方法は?
■日付の意義
自筆証書遺言をするには、遺言者が遺言の全文、日付及び指名を自書し、押印をしなければなりません。
遺言は、要式行為であるため、日付の自書を欠く遺言は無効となります。
遺言書において日付は、
1)遺言者は遺言能力を要するところ、日付は遺言能力の有無の判断の基準となる点
2)前の遺言と後の遺言が互いに抵触する場合、後の遺言が有効となるところ、日付はその基準となる点において意義を有しています。
■記載すべき日付
通常、遺言書の日付は遺言書の全文が記載された日が記載されますが、これについては必ずしも厳格にする必要はないと思われます。
判例は、11月5日午後9時頃に全文を記載したものの、重態で疲労が甚だしいため翌6日午後2時頃に「5日」と記載した事案についても遺言を無効とすべきではないとし、また、遺言者が遺言書の日付以外の全文を記載された日に成立した遺言として適法としています。
もっとも、遺言の厳格な要式行為性に鑑みれば、特段の事情のない限り遺言書を1日で作成し、その作成日を日付とするのが無難です。
■効力が問題となる日付
日付は本来「年・月・日」によって記載されるのが原則ですが、これを備えていない場合、遺言書が有効となるかが問題となります。遺言の要式行為性と遺言者の意思の、どちらをどれだけ尊重するかという観点から検討されることになります。
1 日の記載を欠く日付
「平成〇〇年〇月」「平成〇〇年〇月吉日」といった日付は、具体的な日付がないため有効となるかが問題となります。
判例は「大正5年1月」と記載された遺言について、日付のあることは自筆証書遺言の要件であって日付のない遺言は無効としています。
これに対して、年月の記載だけでも遺言者の遺言能力の判断は可能であること、遺言者の意思を尊重すべきという点を理由として遺言を有効とすべきとの見解もありますが、通説は日付を欠く遺言を無効とすべきであるとしています。
また、「平成〇〇年〇月吉日」との記載のある、いわゆる吉日遺言も暦上の特定の日を表示するものとは言えないとして、無効であるとされています。
2 一見明らかとならない日付の場合
日付は通常「年・月・日」を記載しますが、必ずしも暦日を記載する必要はなく、日の特定が可能であれば日付の趣旨を達成することができ、有効であると考えられます。
判例として、「40年8月4日」との記載を明治40年8月4日の日付として有効としたものや、封筒の裏面に数字を縦書きでの記載を昭和26年3月19日の日付として有効としたものがあります。
学説も、「還暦の日」「〇〇の誕生日」「平成〇〇年春分の日」といった記載も、日の特定が可能なものとして有効と考えています。よって、日付を「妻の誕生日」とした記載も有効であると考えます。
3 複数の日付が記載されている場合
学説は、複数の日付が記載された遺言について有効と解していますが、「反証のない限り、後の日付に完結せられた遺言として取り扱うべき」とする説と、「遺言の内容等に照らし、いずれかが真正な日と解されるときは、その真正の日付をもって遺言書の日付とすべき」とする説があります。
判例は、第1葉末尾には昭和46年10月18日、第2〜4葉末尾に昭和47年11月10日と記載されている遺言書について「両者は全体として1個の遺言を形成しているものというべく、この場合、本件遺言の日付は、特段の反証のない本件においては、後の日付である昭和47年11月10日であると認めるべきである」としたものがあります。
4 真実の遺言作成日と異なる日付が記載されている場合
故意に、真実に反する日付を記載した場合は、遺言の要式行為性に反するものとして無効というべきです。
誤記の場合は、その取り扱いが問題となります。判例は、昭和48年秋に死亡した者が同年夏入院中に、知人の弁護士から勧められて昭和48年8月27日に作成した遺言書を「昭和28年8月27日」とした事例について「自筆証書遺言に記載された日付が真実の日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない」とし、錯誤であること及び真実の作成の日が容易に判明する場合は有効となるとしたものがあります。
!まとめ
遺言書の要式行為性からすると、
◎日付は必ず記載すること
◎遺言書は1日で作成し遺言書を作成した日付を誤りなく記載すること
◎日付は後日紛争とならないように「年・月・日」を1つだけ記載することといったことを、確実に守ることが後日の紛争を回避するために重要となります。
自筆証書遺言をするには、遺言者が遺言の全文、日付及び指名を自書し、押印をしなければなりません。
遺言は、要式行為であるため、日付の自書を欠く遺言は無効となります。
遺言書において日付は、
1)遺言者は遺言能力を要するところ、日付は遺言能力の有無の判断の基準となる点
2)前の遺言と後の遺言が互いに抵触する場合、後の遺言が有効となるところ、日付はその基準となる点において意義を有しています。
■記載すべき日付
通常、遺言書の日付は遺言書の全文が記載された日が記載されますが、これについては必ずしも厳格にする必要はないと思われます。
判例は、11月5日午後9時頃に全文を記載したものの、重態で疲労が甚だしいため翌6日午後2時頃に「5日」と記載した事案についても遺言を無効とすべきではないとし、また、遺言者が遺言書の日付以外の全文を記載された日に成立した遺言として適法としています。
もっとも、遺言の厳格な要式行為性に鑑みれば、特段の事情のない限り遺言書を1日で作成し、その作成日を日付とするのが無難です。
■効力が問題となる日付
日付は本来「年・月・日」によって記載されるのが原則ですが、これを備えていない場合、遺言書が有効となるかが問題となります。遺言の要式行為性と遺言者の意思の、どちらをどれだけ尊重するかという観点から検討されることになります。
1 日の記載を欠く日付
「平成〇〇年〇月」「平成〇〇年〇月吉日」といった日付は、具体的な日付がないため有効となるかが問題となります。
判例は「大正5年1月」と記載された遺言について、日付のあることは自筆証書遺言の要件であって日付のない遺言は無効としています。
これに対して、年月の記載だけでも遺言者の遺言能力の判断は可能であること、遺言者の意思を尊重すべきという点を理由として遺言を有効とすべきとの見解もありますが、通説は日付を欠く遺言を無効とすべきであるとしています。
また、「平成〇〇年〇月吉日」との記載のある、いわゆる吉日遺言も暦上の特定の日を表示するものとは言えないとして、無効であるとされています。
2 一見明らかとならない日付の場合
日付は通常「年・月・日」を記載しますが、必ずしも暦日を記載する必要はなく、日の特定が可能であれば日付の趣旨を達成することができ、有効であると考えられます。
判例として、「40年8月4日」との記載を明治40年8月4日の日付として有効としたものや、封筒の裏面に数字を縦書きでの記載を昭和26年3月19日の日付として有効としたものがあります。
学説も、「還暦の日」「〇〇の誕生日」「平成〇〇年春分の日」といった記載も、日の特定が可能なものとして有効と考えています。よって、日付を「妻の誕生日」とした記載も有効であると考えます。
3 複数の日付が記載されている場合
学説は、複数の日付が記載された遺言について有効と解していますが、「反証のない限り、後の日付に完結せられた遺言として取り扱うべき」とする説と、「遺言の内容等に照らし、いずれかが真正な日と解されるときは、その真正の日付をもって遺言書の日付とすべき」とする説があります。
判例は、第1葉末尾には昭和46年10月18日、第2〜4葉末尾に昭和47年11月10日と記載されている遺言書について「両者は全体として1個の遺言を形成しているものというべく、この場合、本件遺言の日付は、特段の反証のない本件においては、後の日付である昭和47年11月10日であると認めるべきである」としたものがあります。
4 真実の遺言作成日と異なる日付が記載されている場合
故意に、真実に反する日付を記載した場合は、遺言の要式行為性に反するものとして無効というべきです。
誤記の場合は、その取り扱いが問題となります。判例は、昭和48年秋に死亡した者が同年夏入院中に、知人の弁護士から勧められて昭和48年8月27日に作成した遺言書を「昭和28年8月27日」とした事例について「自筆証書遺言に記載された日付が真実の日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない」とし、錯誤であること及び真実の作成の日が容易に判明する場合は有効となるとしたものがあります。
!まとめ
遺言書の要式行為性からすると、
◎日付は必ず記載すること
◎遺言書は1日で作成し遺言書を作成した日付を誤りなく記載すること
◎日付は後日紛争とならないように「年・月・日」を1つだけ記載することといったことを、確実に守ることが後日の紛争を回避するために重要となります。





