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2009年04月17日

外国にいる日本人が遺言書を作成するときは?

■適用される法律(遺言の準拠法)の問題

外国に居る日本人が遺言をする場合、どの国(又は地方)の法律が適用されるのかという問題(準拠法の問題)を考慮する必要があります。

遺言をめぐっては、

@遺言書の作成方法(方式)についての準拠法
A遺言しようとする法律行為(遺贈や認知などの遺言内容)についての準拠法
B遺言の成立及び効力についての準拠法
を、それぞれ考える必要があります。
   
1 遺言書の作成方式についての準拠法

「遺言の方式の準拠法に関する法律」2条に定めるところにより、

  @行為地法(遺言をする国・地方の法律)
  A遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法律
  B遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法律
  C遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法律
  D不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法
  いずれかの法律に適合した方法で作成すれば有効とされます。

したがって、日本人であれば「日本の法律(民968以下)で決められた方式」でも、「遺言書を作成するときに在住している国の法律で決められた方式」でも、有効な遺言を作成することが出来ます。



2 遺言しようとする法律行為についての準拠法

遺言の内容についての問題は、「法の適用に関する通則法」が定めるところによります。

相続については、被相続人の本国法に従うものとされている一方(法通則36)、例えば、認知による親子関係の成立については、認知の当時の子の本国法が定める要件を満たすことも必要とされています(法通則29)。

「本国法」とは、その者が国籍を有する国であり、2つ以上の国籍を有する場合は常居所を有している国ということになります。

なお、日本法を含む多くの国では、相続については上記のように被相続人の本国法を準拠法としています(相続統一主義)が、英米法国では相続財産を不動産と動産に分け、前者は不動産所在地法、後者は被相続人の住所地法を準拠法としています。

例えば、遺産となる不動産がアメリカ・カリフォルニア州にある場合には、被相続人が日本人であっても、その不動産をめぐる手続の準拠法は事実上カリフォルニア州となり、検認の要件・効果や遺言執行等はカリフォルニア州法の規定による必要が生じます。

したがって、外国に遺産となる不動産を所有しているような場合には、遺言作成時に現地の国際私法や遺言法等も検討すべきでしょう。


3 遺言能力や遺言の意思表示の瑕疵などの成立及び効力についての準拠法

日本人の遺言が外国法で定める方式でなされても、遺言の成立及び効力が問題となって日本国内で争われる場合には、遺言当時の遺言者の本国法である日本法で判断されることになります(法通則37)。

遺言の成立とは、遺言能力・遺言者の意思表示の瑕疵など、効力とは、遺言の効力の発生時期・条件・取消しの可否などを指します。


なお、遺言者の年齢、国籍その他の人的資格、及び証人の資格による遺言の方式の制限は、「遺言の方式の準拠法に関する法律」に言う「方式」に含まれるものとされているため(遺言準拠5)、上記1に挙げた準拠法により有効性が判断されることとなります。



■外国において日本民法に基づく遺言を作成するには
  
上記のように、外国であっても日本民法の規定に従って、基本的には日本で作成する場合と同様の要件で自筆証書遺言を作成することが出来ますし、日本の領事の駐在する地であれば公正証書遺言・秘密証書遺言を作成することが出来ます。


1 言語と押印について

民法上、自筆証書遺言や秘密証書遺言では使用言語についての規定はないため、外国語で遺言することも可能です。


また、印鑑がない場合には署名に加えて拇印又は指印で代えることも出来るとされています(最判平元・2・16判時1306・3)。


2 公正証書遺言・秘密証書遺言の作成

公証人が公正証書を作成できる国では、その国の法律に従って作成することも行為地法として有効です(遺言準拠2一)が、それが出来ない国にあっても「日本の領事の駐在する地」であれば、その領事に公証人の職務を行わせ、日本の民法に定められた要件のもとで遺言を作成することが出来ます(領事方式、民984)。

この方法は、領事の駐在する地に住んでいることは要件ではなく、旅行者など一時的滞在者も利用することが出来ます。

本人の確認には、印鑑登録証明書による他、旅券又は運転免許証の提示など、他の確実な方法によることが出来ます(公証28A)。


遺言をする際の用語は日本語でも外国語でも良いですが、遺言者が日本語を解せない場合には通事を立会わせることが必要です(公証29)。

また、証人には遺言者が口授した内容が正確に筆記されたことを証明する役割を担うので、遺言者の述べた内容を理解出来ていなければ、証人立会いの要件が満たされたことにはなりません。


■遺言執行者の指定等について
  
遺言執行者の指定、選任及び権限については、相続の準拠法である本国法(法通則36)が適用され、日本人であれば遺言執行者を指定することができます(民1006@)。


ただし、上記のように英米法国では不動産の相続は、その所在地の法律に従って相続されるのが原則とされており、さらに英米法国では遺言の執行に関して遺言執行者を専ら司法機関の選任によるものとして、裁判所の監督の下で遺産管理・清算を行わせる方正が採られています。

したがって、遺言者が日本以外の国に財産を有している場合には、遺言で指定された遺言執行者でも、裁判所の選任手続を経る必要が生じるなど、その財産の執行は、その国の制度に従って行われることになります。
posted by なり at 08:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 遺言の基礎知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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