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2008年08月29日

危急時に行う遺言の作成方法

■特別方式による遺言


遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という普通方式の遺言があります。

しかし、死期が迫っているなどして普通方式による遺言を作成することが出来ない状況にある者が遺言をすることが出来るようにするため、法は作成要件を緩和した特別方式の遺言を制度として定めています。


特別方式の遺言には、死亡の危急に迫った者が行う危急時遺言と一般社会から隔絶された状況におかれた者が行う隔絶地遺言があります。


さらに、危急時遺言には一般危急時遺言と船舶遭難者遺言があり、隔絶地遺言には伝染病隔離者遺言と在船者遺言があります。
 

■危急時遺言

一般危急時遺言

次の要件を満たす場合には、一般危急時遺言をすることが出来ます。

@疾病その他の事由によって死亡の危急が迫っていること

死亡の危急が迫っているか否かについては、遺言者が主観的に自己に死亡の危急が迫っていると判断すれば足りると解されています。

もっとも単なる予想程度では足りません。
    
なお、遺言者が危急状態から脱して普通方式の遺言が出来るようになってから6ヶ月が経過した場合には、危急時遺言の効力は生じないとされています。

A証人3人以上が立会うこと

証人は欠格事由のない証人適格を有する者でなければなりません。

したがって、例えば証人3人の中に推定相続人が1人でもいる場合には、この要件を欠くことになり遺言は無効になります。

なお、証人全員が遺言の最初から終わりまで立会っている必要があります。

B遺言者が証人の1人に対し遺言の趣旨を口授すること

口授とは、言葉を口で話して相手に伝えることを意味しますので、基本的には口授する能力が必要とされています。

もっとも、遺言者が口の利けない者の場合には、遺言者が証人の前で遺言の趣旨を通訳人の通訳によって申述して口授に代えることになります。

C口授を受けた者がこれを筆記すること

筆記は、口授されたことと一文一句同じである必要はなく、口授の趣旨が筆記されていれば良いと解されています。

なお、筆記にはタイプライター、ワープロの利用が可能であり、筆記する場所は、口授とは違う場所でも良いと解されています。

筆記したものを加除・訂正する場合には、筆記者及び各証人が変更した旨を付記し、署名・押印をしなければなりません。

D口授を受けた者が筆記したものを遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させること

遺言者又は証人が、耳が聞こえない者の場合には、筆記した内容を通訳人の通訳によって読み聞かせに代えることになります。

E各証人がその筆記が正確なことを承認した後これに署名押印すること

証人全員が署名押印する必要がありますが、押印は認印で構いません。

遺言者本人の署名押印は不要です。日付は普通方式の遺言と異なり要件とされていませんので、記載する必要はありません。


一般危急時遺言は、遺言の日から20日以内に証人の1人又は利害関係人が家庭裁判所に請求して確認を得なければ効力が生じません。

これは、遺言が遺言者の真意に基づくものであるか否かを判断するためです。

遺言者の真意につき家庭裁判所が得るべき心証の程度は、確信の程度に及ぶ必要はなく、一応遺言者の真意に適うと判断される程度の緩和された心証で足りると解されています。

なお、管轄裁判所は、相続開始地及び遺言者の住所地の家庭裁判所になります。


船舶遭難者遺言

船舶が遭難した場合で、その船舶中にあって死亡の危険が迫った者は、船舶という限られた状況下にあり、証人を確保することが困難であると考えられるため、一般危急時遺言よりもさらに緩和された要件のもとに遺言をすることが出来ます。

すなわち、証人については2人以上の立会いで足り、口頭で遺言をすることで、その場での筆記及び読み聞かせは不要です。

遺言の趣旨の筆記及び各証人の署名押印は、後日別の時にすることが出来ます。

なお、証人の中に署名又は押印をすることが出来ない者がいる場合には、署名押印できない事由を付記することが必要となります。



■隔絶地遺言

1 伝染病隔離者遺言

伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる者は、警察官1人及び証人1人以上の立会いをもって遺言書を作成することが出来ます。

条文の文言上は伝染病のためと規定されていますが、これに限らず地震等によって交通が遮断されている場合も本条による遺言が出来ると解されています。

遺言者及び立会人並びに証人が署名押印することが必要となりますが、署名押印することが出来ない場合には、その事由を付記することになります。

なお、遺言者が普通方式の遺言をすることが出来るようになってから6ヶ月間生存するときは遺言の効力が失われます。


2 在船者遺言

船舶の中にいる者には、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いをもって遺言書を作成することができます。

遺言者が普通方式の遺言をすることが出来るようになってから6ヶ月間生存するときは遺言の効力が失われます。


posted by なり at 14:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 遺言の基礎知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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