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2008年11月05日

押印・署名の方法とその留意事項は?

■署名・押印の意義

遺言は遺言者の単独行為であるため、その作成方式について厳格な要件を定めており自筆証書遺言では、全文、日付及び氏名を自書し、これに押印しなければならないとしています。

そして署名と押印とは、「遺言者が誰であるかということ」及び「遺言者が真正な真意をもって遺言書を作成したこと」を明らかにするために、原則として遺言者自らなすことが求められています。


■署名の方法

署名は「氏名の自書」とある以上、姓名共に書くことが原則ですが、遺言者が誰であるかを知るに足り、他人と混同を生じなければ姓名共に書く必要はないとされています。

もっとも、姓だけでは同じ姓の他の家族と混同されるおそれがあり、上記大審院の判例も姓のない名前のみの事案で有効な署名であるとしたものであったことからすると、姓のみの遺言は慎重になされるべきでしょう。

また、氏名は戸籍上の氏名と同一でなくても良く、遺言者が通常用いている通称、芸名、ペンネーム等でも、それが遺言者と同一性を有することが示されていれば足りるとされています。

戸籍上「根来正雄」という氏名の者が、生前使用していた「根来政雄」という氏名で遺言書を自書した場合、遺言書を有効とした事案があります。


■押印の要否・方法等

1 押印の要否
 

押印の要否に関し、例えばクレジットカードにおいて署名のみで足りるとされているなど、署名のみで事足りる場面が増えた社会の動向からすると、常に押印を必要とすることは妥当でないとして、立法論的には押印を不要とし、解釈論的にも押印の要件を緩和して解釈するべきであるとする意見もあります。


しかし、押印を不要とすることは民法の明文に反するもので、押印を欠く遺言書を有効とすることは原則として出来ないものと考えます。

また、昨今、逆に本人確認の重要性が指摘されるようになっている社会情勢からすると、押印を直ちに不要とすることは妥当でないように思われます。


判例は、遺言者が遺言書作成の約1年9ヶ月前に日本に帰化したロシア人であり、長年日本に居住するも、主としてロシア語又は英語を使用し日本語は片言を話すに過ぎず、印章を使用するのは官庁に提出する書類等、特に相手方から押印を要求されるものに限られていた等の事情がある事案において、自筆証書遺言に署名のみ記載し押印を欠く遺言書を有効としたことがあります。

しかしながら、上記判例は特殊な事情の元に認めた判例であって、一般的に押印を不要とした判例ではないと考えられます。



2 押印の種類


(1)印鑑の種類

   使用される印鑑は、実印でも認印でも構いません

(2)指印の可否

   押印が指印で足りるかという点については争いがありましたが、   最高裁判所は「押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他   の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺することをもって足りるとする   のが相当である」として、指印で足りることを認めました。

   その理由として、最高裁判所は「押印について指印を持って足り   ると解したとしても、自筆証書遺言において遺言者の意思の担保   に欠けるとは言えない」、「実印による押印が要件とされていな   い文書については、通常指印があれば押印があるのと同等の意義   を認めている我が国の慣行しない法意識がある」、「指印につい   ては本人の指印であるか印影の対照によって確認することは出来   ないが、それは印章による押印であっても印影の対照のみによっ   ては遺言者本人の押印であると確認し得ない場合があり、印影の   対照以外の方法によっても遺言者本人の押印であることを立証し   得る場合は少なくない」とのことを挙げています。


   よって、押印が指印であっても遺言は無効となりません。
   もっとも、判例は自筆証書遺言の事例であり、すべての方式の遺   言書に当てはまるか、必ずしも明らかとなっていないことや、本   来は印鑑による押印を要求するのが法の趣旨と考えられることか   らすると、印鑑による押印をするのが無難であると考えます。


3 押印の場所
  
押印の場所については、署名の下になされるのが通常ですが、遺言書本文の入れられた封筒の封じ目にされた押印をもって、押印の要件に欠けるところはないとした事例があります。



4 契印の要否

遺言書が数葉に渡る場合、その間に契印・編綴がなくても、その内容・外面等から見て1通の遺言書であることが確認出来る限り遺言書は無効となりません。


5 他人による押印の効果

民法968条1項は「遺言者が」「これに印を押さなければならない」としている以上、原則として遺言者自らが押印しなければならず、遺言者と無関係に他人が押印した遺言は無効であると考えられます。

もっとも、必ずしも遺言者が常に押印しなければならないというものではなく、判例は遺言者の依頼により病床のそばにいた者が、遺言者の面前で押印した場合について有効であるとしています。

また、遺言者がAに押印を欠く遺言書を交付し、かつ、Bに預けてある実印の返還を受けて遺言書に押印するよう指示し、AがBから実印の返還を受けて遺言者の指示どおりに遺言書に押捺した場合も、遺言者の特定及び遺言意思の確認に欠けるところがないとして、押印を有効とした事例があります。

このように、遺言者の特定及び遺言意思の確認に問題がない場合、他人による押印を有効とした判例もありますが、遺言者の特定及び遺言意思の確認がされれば個人による押印で足りるとすることも疑問の残るところです。

事情を個別に判断して、遺言者自身による押印と同様と言えるような場合には例外的に有効となり、遺言者の手による押印が原則である以上、特段の事情がある場合を除き、遺言者による押印を行うのが確実な方法であると考えます。


注意!

署名・押印については、これを緩和してとらえる判例も存在しますが、遺言の厳格な要式行為性からすると遺言者自身によって署名押印をなした方が間違いがないということは言うまでもありません。

署名押印等の要式面で間違いがないようにするには、公正証書遺言による方がより確実と言えます。
posted by なり at 11:04| Comment(1) | TrackBack(1) | 遺言の基礎知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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突然、失礼しました。
uc5coO4K
Posted by hikaku at 2009年06月22日 22:14
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モンブラン カロリー
Excerpt: 押印・署名の方法とその留意事項は?: 遺産相続が!遺言(遺言状)作成が!「この事例」で10倍理解する相談教室
Weblog: モンブラン カロリー
Tracked: 2013-11-25 03:01
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